■12月7—10日 福岡モーターショー マリンメッセ福岡、福岡国際センターなど■
「ここにはインディアンドリームがある」。インド最南端、ケララ州トリバンドラムの情報技術(IT)団地「テクノパーク」のコーディネーター、スリクマール・ナヤ氏が熱く語り始めた。
同州は識字率が90%を超え、インドの平均65%を大きく上回る教育先進地。しかし、就職先が無く、バンガロールや米シリコンバレーなどにIT人材が流出していた。
それに歯止めをかけ、IT集積地にしようと州政府などが一九九四年、テクノパークを整備。六十三万平方メートルの土地に何棟ものビルを建てた。現在は、インドを代表する大企業からベンチャー企業まで百三十社が入居、一万六千人が働く。
成長して広いフロアに移るベンチャー企業や「地元で働けてよかった」という若い技術者の姿を、ナヤ氏は数多く見てきた。パーク内は今もビルの建設が続き、将来は三百三十社で五万人が働く見込みという。
ケララの構図は、理工系大学が多い割に東京、大阪に人材を流出させてきた九州に似ていないか。自動車産業の集積が進む今こそ、若者が能力を発揮できる産業を創出する取り組みが必要だ。
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十一月に訪れた中国南部の自動車生産拠点、広州。広州モーターショーの人込みの中、日系車をつぶさに見ていた二十代の青年が「働いて金をため、いつの日か日系車を買うんだ」と、目を輝かせたのが印象的だった。
富裕層が多い広州でも、乗用車の世帯普及率は「まだ一割にも満たない」(現地日系メーカー社員)。大半の市民にとって車はまだ「高根の花」だが、それは、中国の乗用車市場に広大な伸びしろがあることの裏返しでもある。
九州が、中国やインドなどと大きく違うのは、足元に成長市場がないことだ。国内需要が低迷する中、北部九州で造る車の大半は北米や欧州への輸出向け。日産九州工場(福岡県苅田町)とトヨタ九州(同宮若市)では、特にそうだ。
ただ、北部九州に立地する完成車工場はそれぞれ、世界レベルの生産効率、環境対策を含めた技術力を誇る。それらと取引をする部品メーカーもしかりだ。中国などの急速な成長は、脅威であると同時に、九州からの輸出拡大や企業進出のチャンスでもある。果敢に飛び込む企業がもっとあっていいだろう。
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九州の自動車産業が永きにわたって発展できるかは、「自立した生産拠点」になれるかにかかっている。そして、その鍵は、車の設計・開発を担う“頭脳”が握る−。
一連の取材でそうした考えが深まる中、トヨタ九州は、二〇一〇年代半ばをめどに設計・開発拠点を設置することを表明した。当面の開発対象にエンジンなど基幹部品は含まないが、九州にとって初めての頭脳。大きな一歩と受け止めたい。
開催中の福岡モーターショー2007では、ハイブリッド車や燃料電池車など、環境性能を追求した未来の自動車が勢ぞろいした。いつの日か、こうした次世代カーを九州で生み出してほしい。しかし、それは一朝一夕に実現できることではない。取り組むべき課題は多い。
まずは、期待されるほど育っていない産業の「すそ野」を広げ、厚みを増さなくてはならない。企業誘致や、地場企業の自動車産業への参入支援、人材育成などを戦略的に進め、頭脳拠点を呼び込める素地をつくる必要がある。
九州の自動車産業が力をつけることで、九州だけでなく、アジアを含む世界の人々の生活を豊かにできれば、と思う。
=おわり