■12月7—10日 福岡モーターショー■
「自動車産業が集積する福岡で、ビジネスパートナーになってほしい」。あいさつに立った福岡市経済振興局長渡辺正光(54)は会場を見渡しながら関心の高さを実感した。同市のインド訪問団(八人)が十一月二十二日、バンガロールのホテルで開いた商談会。「組み込みソフト」にテーマを特化したにもかかわらず、予想を二十社も上回る約七十社の情報技術(IT)企業が参加した。
「自動車産業に参入したい。だれの紹介がいるのか」。会社のパンフレットを手に、熱心に売り込む企業幹部。九州の人材について矢継ぎ早に質問をぶつける社長…。
組み込みソフトは自動車や家電に内蔵された小さなコンピューター(マイコン)のプログラム。安全性や乗り心地が追求されている自動車のマイコン搭載数は二十年前の約三倍に増え、トヨタの高級車レクサスは約百個を装備する。プログラムの情報量は約七百万行、本一千冊に匹敵する。
福岡モーターショーに出展される日産の電気自動車ピボ2は、運転席のロボット内のコンピューターが、ドライバーの表情を感知。眠気を察知すると「眠いんじゃないの」と注意を喚起する。
こうした自動車の進化・ハイテク化は、IT先進国インドにとって商機の拡大を意味する。
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「私は日本人です」。チェンナイのIT企業、SRMテクノロジーズが経営する大学では五百人が日本語を学ぶ。寮では学生が漢字交じりの文章を書く練習をしていた。
英語を話せることで欧米企業との取引を優位に進めてきたインド企業の、欧米に次ぐ日本IT市場参入を目指す意欲には並々ならぬものがある。
インドの人々は一般的に、タミル語など故郷の言葉と公用語の英語、ヒンディー語を話す。
「さらに日本語を勉強するのはそう難しくない。日本人が英語を勉強するより簡単なはずだ」
日本人教師を雇い、従業員に日本語を教えるトリバンドラムのIT新興企業アクセル社長、フィリップ・ジョン(52)は、いたずらっぽく笑った。
チェンナイのある企業では、技術者がコンピューターに「JA○○」と日本語で入力しており、のぞき込むと「ノーキョー(農協)」と言葉が返ってきた。多くの企業に日本語を話せる技術者がおり、日本語の資料を用意している社もあった。
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地方にとってインドはまだ遠い存在だ。地方の中小企業は、遠距離というだけでなく「英語圏」という壁や、衛生面など社会資本への不安もあり、尻込みしている。その中で、福岡市の訪問団が地方ではいち早く、日本に接近するインドの実相を知った意義は大きい。
日本の組み込みソフト技術者は今でさえ、十万人が不足しているといわれている。「九州の人々をインドへ研修に出したり、インド人技術者を招いて仕事を受注したり、インドの技術力で九州の人材の力を高めることができるのではないか」
団員の一人、九州大大学院システム情報科学研究院教授福田晃(53)には、インドの急成長ぶりが目に焼きついた。
福田は十一月二十四日、インドから帰国。五日後の二十九日、九州のIT企業や大学など二百四十一団体が設立したシステム協議会の副会長に就任した。協議会は、九州の関係者がまとまって技術者の育成や技術力向上を図るのが目的だ。
「自動車産業が集積する九州を、世界に通用するソフト開発拠点にしたい」
福田は力を込めた。 (敬称略)